子どものいびき、「寝相のせい」と思っていませんか?

「子どもはいびきをかくもの」「寝相が悪いだけかな」と思っていませんか?

風邪をひいたときや鼻が詰まっているときに、数日だけいびきをかくことは珍しくありません。一方で、風邪をひいていないときにも、ほぼ毎晩いびきをかく場合や、眠っている途中で呼吸が止まるように見える場合には、睡眠中の空気の通り道が狭くなっている可能性があります。

子どもの閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)では、鼻やのどの状態、とくに扁桃(口蓋扁桃)やアデノイド(咽頭扁桃)の肥大が関係することがあります。

今回は、子どものいびきと睡眠時無呼吸、扁桃・アデノイドとの関係について、耳鼻咽喉科の立場からご説明します。

子どもの「いびき」は、どこから音が出ている?

眠ると筋肉がゆるみ、鼻からのどにかけての空気の通り道は、起きているときより狭くなります。その狭い部分を空気が通ると、周囲の組織が振動して「グーグー」「ガーガー」という音が出ます。これがいびきです。

鼻風邪などで数日だけいびきをかくのであれば、一時的な鼻づまりが原因のこともあります。しかし、風邪をひいていないときにも習慣的にいびきをかく場合には、鼻やのどの通り道を狭くしている原因がないか確認することが大切です。

扁桃とアデノイドとは?

「扁桃(口蓋扁桃)」は、口を大きく開けたときに、のどの左右に見える組織です。

一方の「アデノイド(咽頭扁桃)」は、鼻の一番奥からのどへつながる部分にあり、普通に口を開けただけでは見えません。

どちらも子どもの時期に発達するリンパ組織です。大きいこと自体が、すぐに病気というわけではありません。ただし、扁桃・アデノイドの大きさに加えて、顔やあごの形、鼻づまり、肥満などの要因が重なると、睡眠中の空気の通り道が狭くなることがあります。

小児の閉塞性睡眠時無呼吸では、扁桃・アデノイド肥大は代表的な原因の一つです[1,2]。

こんな眠り方をしていませんか?

お子さんがいびきをかいている場合には、音の大きさだけではなく、眠っている様子も観察してみてください。

  • 風邪をひいていないときにも、ほぼ毎晩いびきをかく
  • 眠っている途中で、呼吸が止まるように見える
  • 呼吸が止まったあと、「ガッ」「フッ」と大きく息をする
  • 胸やお腹を大きく動かし、苦しそうに呼吸している
  • 口を開けて寝ている
  • 首を反らすなど、呼吸しやすそうな姿勢で寝ている
  • 寝相がとても激しい、何度も目を覚ます
  • 汗をたくさんかいて眠っている

診察室では、普段の睡眠中の様子を直接見ることができません。気になる呼吸がある場合には、スマートフォンで睡眠中の様子を短く動画に撮影し、診察時に見せていただくと参考になることがあります。

ただし、家庭で撮影した動画だけで睡眠時無呼吸を診断したり、重症度を決めたりすることはできません。

昼間に眠そうでなくても、睡眠の問題が隠れていることがあります

大人の睡眠時無呼吸というと、「昼間に眠くなる」というイメージが強いかもしれません。

子どもでは、必ずしも典型的な眠気として現れるとは限りません。睡眠呼吸障害に伴って、次のような変化がみられることがあります[1,2]。

  • 集中しづらい、落ち着きがない
  • 学校や園での様子が以前と違う
  • 朝なかなか起きられない
  • 夜尿(おねしょ)が続く
  • 成長が気になる

もちろん、これらの症状には睡眠以外にもさまざまな原因があります。「落ち着きがないから睡眠時無呼吸」という意味ではありません。

大切なのは、夜のいびきや呼吸の様子と、日中の状態を一緒にみることです。

耳鼻咽喉科では何を調べる?

子どものいびきで受診された場合、まず症状の経過を伺います。

「毎晩なのか」「風邪のときだけなのか」「呼吸が止まることがあるか」「口呼吸があるか」「日中の様子はどうか」といった点を確認します。

耳鼻咽喉科では、さらに次のような点を評価します。

  • 鼻づまりの原因
  • アレルギー性鼻炎の有無
  • 扁桃の大きさ
  • アデノイドの状態
  • 鼻からのどまでの空気の通り道

アデノイドは、口を開けただけでは直接見えません。そのため、必要に応じて鼻咽腔側面X線検査や内視鏡検査などを組み合わせて評価します。

どの検査が適しているかは、お子さんの年齢、症状、診察への協力のしやすさなども考慮して判断します。すべてのお子さんに同じ検査を行うわけではありません。

睡眠時無呼吸は、どうやって診断する?

いびきがあるだけで、「睡眠時無呼吸」と診断するわけではありません。

小児の閉塞性睡眠時無呼吸を客観的に評価する標準的な検査は、終夜睡眠ポリグラフ検査(polysomnography:PSG)です。睡眠中の呼吸、血液中の酸素の状態、脳波を含む睡眠の状態などを一晩かけて記録します[1]。

一方で、小児のPSGを行える施設には限りがあります。また、すべてのお子さんに最初からPSGが必要とは限りません。

症状、診察所見、基礎疾患の有無、手術を検討しているか、症状の強さと扁桃・アデノイドの大きさが一致しているかなどを踏まえ、必要な場合に睡眠検査や専門施設での評価を検討します。とくに低年齢、肥満、ダウン症候群、頭蓋顔面の形態異常、神経筋疾患などがある場合や、手術の必要性が診察だけでは判断しにくい場合には、術前PSGの重要性が高くなります[2]。

なお、大人と子どもでは睡眠検査の評価方法や診断基準が異なります。 大人の検査結果の見方や治療基準を、そのまま子どもに当てはめることはできません。

「扁桃やアデノイドが大きい=手術」ではありません

扁桃やアデノイドが大きくても、いびきや睡眠中の呼吸に問題がなければ、必ずしも手術が必要になるわけではありません。

一方、閉塞性睡眠時無呼吸があり、その主な原因として扁桃・アデノイド肥大が考えられる場合には、口蓋扁桃摘出術とアデノイド切除術が代表的な治療選択肢になります[1,2]。

治療方針は、次のような点を総合して考えます。

  • 睡眠時無呼吸の有無と程度
  • 扁桃・アデノイドの状態
  • 鼻づまりなど、ほかの原因
  • 肥満の有無
  • 年齢や基礎疾患
  • 日常生活や成長への影響

手術後にも睡眠呼吸障害が残ったり、再び症状がみられたりするお子さんもいます。そのため、必要に応じて治療後の症状や睡眠状態も評価します[2,3]。

当院で診察・評価を行い、手術や専門的な睡眠検査が必要と判断した場合には、対応可能な医療機関へご紹介します。

鼻づまりの治療が大切なこともあります

子どものいびきは、扁桃・アデノイドだけで決まるわけではありません。

アレルギー性鼻炎などで鼻が詰まっていると、口呼吸になり、睡眠中の呼吸に影響することがあります。鼻の病気があれば、その治療を行いながら睡眠の状態をみていくこともあります。

「いびきだから扁桃を取る」と単純に考えるのではなく、鼻からのどまで、空気の通り道全体をみることが耳鼻咽喉科での評価のポイントです。

受診前に確認しておきたい5つのこと

診察前に、可能であれば次のことを確認してみてください。

  1. いびきはほぼ毎晩か、風邪のときだけか
  2. 息が止まるように見えることがあるか
  3. 苦しそうな呼吸や激しい寝返りがあるか
  4. 口を開けて眠っているか
  5. 朝の目覚めや日中の様子に気になる点があるか

気になる場面をスマートフォンで撮影しておくのも参考になります。

「この程度のいびきで受診してよいのかな」と迷う必要はありません。診察した結果、鼻づまりの治療や経過観察でよいこともあります。

夏休みは、お子さんの睡眠を見直す機会にも

普段は、お子さんが眠ったあとに家事をしたり、保護者の方もすぐ休んだりして、睡眠中の様子をじっくり見る機会は意外と少ないものです。

夏休みなど、家族で過ごす時間が増える時期に、

  • そういえば、風邪でもないのに毎晩いびきをかいている
  • ときどき息が止まっているように見える
  • いつも口を開けて寝ている

と気づくことがあります。

そのような場合には、一度耳鼻咽喉科でご相談ください。いびきだけを見るのではなく、鼻づまり、口呼吸、扁桃・アデノイド、睡眠中の呼吸などを一緒に確認し、お子さんに必要な評価や治療を考えていきます。

最後に

子どものいびきの多くは、風邪や一時的な鼻づまりに伴うものです。しかし、風邪をひいていないときにもほぼ毎晩続くいびきや、睡眠中の呼吸停止、苦しそうな呼吸がある場合には、閉塞性睡眠時無呼吸が隠れていることがあります。

扁桃やアデノイドが大きいだけで、すぐに手術が必要になるわけではありません。夜の呼吸の様子、鼻やのどの診察所見、日中の状態などを合わせて評価することが大切です。

気になる様子があれば、睡眠中の動画もお持ちのうえ、ご相談ください。

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参考文献

  1. Marcus CL, Brooks LJ, Draper KA, et al. Diagnosis and Management of Childhood Obstructive Sleep Apnea Syndrome. Pediatrics. 2012;130(3):576-584. doi: 10.1542/peds.2012-1671. PMID: 22926173.
  2. Mitchell RB, Archer SM, Ishman SL, et al. Clinical Practice Guideline: Tonsillectomy in Children (Update). Otolaryngol Head Neck Surg. 2019;160(1 Suppl):S1-S42. doi: 10.1177/0194599818801757. PMID: 30798778.
  3. Ehsan Z, Ishman SL, Kimball TR, et al. Management of Persistent, Post-adenotonsillectomy Obstructive Sleep Apnea in Children: An Official American Thoracic Society Clinical Practice Guideline. Am J Respir Crit Care Med. 2024;209(3):248-261. doi: 10.1164/rccm.202310-1900ST. PMID: 37890009.