突然始まる激しい回転性のめまい、耳鳴り、耳の詰まり感——。メニエール病の発作は、前触れなくやってきて、患者さんの日常生活に大きな影を落とします。「また来るかもしれない」という不安を抱えながら過ごしている方も多いのではないでしょうか。
今回は、薬だけでは十分にコントロールできない難治性のメニエール病に対して、当院でも導入している「中耳加圧療法(EFET01)」についてご紹介します。
🟢 この記事のポイント
- 中耳加圧療法(EFET01)は、鼓膜への切開やチューブ留置なしで内耳に圧力を届ける、体への負担が少ない治療法です。
- 薬での保存的治療が効かない難治性メニエール病(Stage 4以上)が対象で、2018年より健康保険が適用されています。
- これまで大学病院での診断が必要であった難治性メニエール病の診断も当院で可能!
- 機器を自宅でレンタルし、1日2回・約3分使用。12ヶ月の治療で90%以上の患者さんにめまい発作の軽度改善以上の結果が報告されています。
🟢 メニエール病とはどんな病気?
メニエール病は、内耳のリンパ液(内リンパ液)が過剰に溜まり、内耳が「水膨れ」の状態(内リンパ水腫)になることで起こる病気です。
主な症状は次の3つで、これらが繰り返し現れることが特徴です。

原因はまだ完全には解明されていませんが、ストレス・睡眠不足・過労・気圧の変化などが引き金になることが知られています。
🟢 メニエール病の治療の流れ
メニエール病の治療は、段階を追って進めていきます。まずは生活習慣の改善(睡眠・水分・塩分・ストレス管理)と内服薬(利尿薬・循環改善薬など)による保存的治療を継続します。
しかし、これらの保存的治療を続けてもめまい発作が繰り返し起こる難治性のケースでは、より積極的な治療が検討されます。そのひとつが「中耳加圧療法」です。

なお、中耳加圧療法の保険適用は、診療ガイドラインの重症度分類でStage 4(保存的治療に抵抗し、外科的治療が考慮される時期)に該当する方が対象です。受診してすぐに開始できる治療ではなく、一定期間の保存的治療歴が必要です。
他院で治療を受けていた方は、治療経過のわかる紹介状をお持ちください。
またこれまで、難治性メニエール病の診断に必要な特殊なMRI検査は大学病院など大きな総合病院でのみ可能でしたが、副院長の働きかけから、周辺医療機関と連携し、クリニックレベルでも診断ができるようになりました。
🟢 中耳加圧療法(EFET01)とは?
中耳加圧療法は、専用機器「EFET01」を耳にあてることで、やさしい圧力の変化を内耳に届ける治療法です。この圧力の刺激が内耳のリンパ液の循環を改善し、めまい発作を軽減することが期待されます。
EFET01の最大の特長は、これまで治療開始に必要であった鼓膜切開やチューブ留置が不要という点です。外耳道にあてるだけで圧力が鼓膜を通じて内耳に届くため、体への負担が少ない治療法です。2018年より日本の健康保険が適用されています。

🟢 EFET01の特長
- 手術・処置が不要:鼓膜への切開やチューブ留置は必要ありません。体への負担が少なく、高齢の方にも受けていただけます。
- 自宅で使用できる:機器は当院からレンタルし、ご自宅で1日2回(1回あたり約3分)使用していただきます。仕事や家事のすき間に行える手軽さがあります。
- 保険が適用される:2018年より健康保険の対象となっています。
- 高い有効性:適切に継続した場合、1年間の治療で90%以上の難治性患者さんでめまい発作の頻度が減少したと報告されています。
🟢 実際の治療の流れ
当院での治療は、おおよそ次のように進みます。
- 診察・診断の確認(メニエール病確実例であること・Stage 4 以上であることを確認)
- EFET01機器の貸し出しと使用方法の指導
- 毎日「めまい手帳」に症状を記録していただきます
- 月1回の定期受診で効果・経過を確認
治療期間は基本的に12か月で、症状に応じて最長36か月まで継続することがあります。毎日の使用と毎月の受診が治療を続けるうえで大切な条件となりますので、ご協力をお願いします。
🟢 費用について
中耳加圧療法は健康保険が適用されます。3割負担の場合、管理料として月額6,000円程度が目安です(診療報酬の改定により変動する場合があります)。機器はレンタルのため、購入費用はかかりません。
🟢 最後に
「また発作が来るかもしれない」——そのような不安から少し解放されるために、中耳加圧療法は有力な選択肢のひとつです。ただし、すべての方に同じ効果が得られるわけではなく、また保存的治療を十分に行ったうえで検討する治療です。
「薬を続けているけれどめまいが治まらない」「もう少し積極的な治療を試したい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。一緒に治療の方針を考えていきましょう。
参考文献
1. Kitahara T, et al. 12-month effect of middle ear pressure therapy with the EFET01 device for intractable definite Meniere’s disease and delayed endolymphatic hydrops after certification by the public health insurance system in Japan. Acta Otolaryngol. 2022;142(6):483-489.
2. Kitahara T, et al. Long-term effects of middle ear pressure therapy with the EFET01 device in patients with Meniere’s disease and delayed endolymphatic hydrops in Japan. Acta Oto-Laryngologica. 2023;143(10).
3. 日本めまい平衡医学会. メニエール病・遅発性内リンパ水腫診療ガイドライン2020年版. 東京: 金原出版; 2020.








